■共産主義者クイズ   
空飛ぶモンティ・パイソン 第25話(U−12)

司会者 Presenter :エリック・アイドル
マルクス Karl :テリー・ジョーンズ
ナレーション Voice Over :マイケル・ペイリン


場面:討論番組のようなセットのスタジオ。

キャプション:「ワールド・フォーラム World Forum」

司会者(エリック)
 みなさん、こんばんは。今夜はテレビ史上、前代未聞の顔合わせとなりました。この方々をスタジオへお招きできたことは、当番組にとっても、大変に名誉なことであります。こちらは、近代社会主義の創始者にして、『共産党宣言』の著者でもある、カール・マルクス氏。

カール・マルクス(テリーJ)が軽く頷く。

司会者(エリック)
一般にはレーニンという名前で知られているウラジミール・イリア・ユリアノフ氏。ロシア革命の指導者であり、著述家、政治家、そして近代共産主義の父でもあります。

レーニンも軽く頷く。

司会者(エリック)
キューバ・ゲリラのリーダー、チェ・ゲバラ氏。

葉巻をくゆらすゲバラが映る。

司会者(エリック)
そして、1949年以降、中国共産党の主席を務める毛沢東氏です。

毛沢東が頷く。

司会者(エリック)
(カードを取り出して)それでは、カール・マルクス、あなたへの最初の問題です。「ハンマー」、「ハンマー」というニックネームを持つイギリスのサッカー・チーム*1はどこでしょう?「ハンマー」ですよ。

マルクス、顔をしかめて、明らかに分かっていない様子。

司会者(エリック)
ダメですか?うーん、残念でしたねぇ、カール。それじゃあ、ゲバラ、次はアナタにいってみよう。コヴェントリー・シティが最後にFA杯*2で優勝したのは何年?

チェ・ゲバラ、呆れた顔で司会者を見る。

司会者(エリック)
もう一度、言いますよ。コヴェントリー・シティが最後にFA杯で優勝したのは何年?(誰も答えようとしない)。分かりませんか?でも、答えられなくて当たり前。実はこれ引っかけ問題なんでーす。コヴェントリー・シティは一度もFA杯で優勝したことがないんですねぇ〜。さあ、得点は横並びのまま、次のラウンドへ。レーニン、ここは幸先よく10点獲得といきたいね。問題、テディ・ジョンソン&パール・カールは1959年のユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝しましたが、その時に歌った曲のタイトルは?

レーニン、首を振る。

司会者(エリック)
テディとパールが1959年のユーロビジョン・ソング・コンテストで優勝した時ですよ。みんな、お手上げ?(毛沢東がボタンを押す)。はい、毛さん。
毛沢東
「シング・リトル・バーディ」?
司会者(エリック)
大正解!やりましたね(拍手)。さあ、お次はスペシャル・プレゼント・クイズのコーナーです。挑戦者はカール・マルクス。そして今週の賞品は、豪華な応接セット。

スタジオ後方のカーテンが開き、豪華な応接間セットがお目見えする。カールがやってきて、司会者の側に立つ。

司会者(エリック)
さあ、カールが選んでくれたセクションは、工場における労働者支配。さっそく行きますよ、第1問。緊張してる?(カール、小さく頷く。司会者はカールの方に腕をまわして、問題を読み上げる)。工業プロレタリアートの成長を左右するのは、どの階級の発展?
マルクス(テリーJ)
工業ブルジョアジーの発展。(拍手が起こる)
司会者(エリック)
正解!さあ応接間セットが近づいてきましたよ、カール。第2問です。階級同士が行うのは、何の闘争ですか?何の闘争?
マルクス(テリーJ)
政治的闘争。
司会者(エリック)
そのとおり!あと一問です、カール。このステキな応接セットが、もうすぐアナタのものに!さあ、準備はいい?(カール、頷く)よおし、やる気十分だね。カール・マルクス、最後の問題です。1949年のFA杯最終戦、優勝したのはどこのチーム?
カール(テリーJ)
ろ、労働者による生産手段の支配?都市におけるプロレタリアートの闘争?
司会者(エリック)
ハズレ〜。正解は、3−1でレスターを破った「ウルヴァーハンプトン ウォンダラーズ」*3です。

サッカー大会のストック・フィルムが流れる。

ナレーション(マイケル)
今日の「ワールド・フォーラム」、出演者はカール・マルクス、チェ・ゲバラ、レーニン、毛沢東でした。来週はモリニュー競技場から、アジア・アフリカ諸国のリーダー4人 VS ブリストル・ローヴァー*4の模様をお送りいたします。

*1 「ハンマー」というニックネームを持つイギリスのサッカー・チーム
「パイソン大全」にも書かれていましたが、「ウェウストハム・ユナイテッド WEST HAM UNITED FOOTBALL CLUB」のこと。1895年創立、ロンドンがホーム・タウンで、「ハンマー The Hammers 」の他にも「Iron (鉄)」という愛称を持つそうです。何の役に立つかは分かりませんが、「ウェスト・ハム・ユナイテッド」のオフィシャル・サイトはこちら    →戻る
*2 FA杯 FAcup
「イングランド協会加盟チームによる年次勝抜き競技会」(研究社「リーダー英和辞典」より)だそうです。私はサッカーについて「手を使ってはいけない」程度のことしか知らないのですが、パイソンによく登場するスポーツなんで、ちょっと調べてみました(もぎたて新鮮ですので、何か間違いがあればご指摘お願いします)。
 イングランドにおけるサッカーの歴史は古く、1888年に世界最初のリーグ戦が開幕。パイソン放映時にどういう形態をとっていたのかは不明ですが、現在は、プレミアシップ(20チーム)ディヴィジョン1(24チーム)ディヴィジョン2(24チーム)ディヴィジョン3(24チーム)の4層によってプロリーグが構成され、昇格・降格の熾烈な争いが繰り広げられているそうです。
 FAカップは伝統ある国内カップ戦で、まず、上記4層の更に下部に属するチームによって予選が行われ、その後、ディヴィジョン2、3のチームが参戦。ディヴィジョン1、プレミアシップは、第3ラウンドになってから、ようやく登場します。
 と、ここまでは調べてみたんですが、もう少しつっこんだ部分を知りたいと思い、在英のakkoさんに伺ったところ、詳しいお返事を頂戴しました。とても面白い内容なので、その一部をココで紹介させて頂きます(以下、青字は、全てakkoさんの解説からの引用部分です)。
―「サッカーは労働者階級の英人のスポーツです。というか、ただのスポーツではなく彼らの生活であり宗教でもあり、その係はもはや危うい一線を越えています。現在の日本にはこれに似たものが存在しないのでたとえを引きにくいんですが、強いて言えば昭和20年から30年代の日本人と野球、もしくはプロレスの関係に似ているかもしれません」。
―「本来こういう育ちのよいパブリックスクールやオックスブリッジ出身の男性は、サッカーを『労働者階級の暴動の場』くらいにとらえていてかかわりを一切持たずに一生を終えます(この階級がやるスポーツはクリケットです)。労働者階級の方でもそういう『上』の人々のことをすごい勢いで敵視しています。だから、パイソンでたまにサッカーねたが出てくると、連中がその『敵地』にどんどん踏みこんでいき大声でギャグをやっているのを見ているようで、危なくて冷汗をかきつつでも大笑いしてしまいます」。ナルホド。そう考えてみると、ドイツ哲学者vsギリシャ哲学者サッカー大会も、いろんな楽しみ方が出来そうですね。    →戻る
*3 ウォルヴァーハンプトン・ワンダラーズ WOLVERHAMPTON WANDERERS FOOTBALL CLUB
1879年創立、ホーム・タウンはウォルヴァーハンプトン。チームの愛称は「狼 Wolves 」。ディヴィジョン1なので、まずまずの強さといったところかしらん?このスケッチに登場するモリニュー Molineux がホーム・スタジアムだそうです。オフィシャル・サイトはこちら     →戻る
*4 ブリストル・ローヴァー BRISTOL ROVERS FOOTBALL CLUB
1883年創立、ホーム・タウンはブリストル。愛称は「海賊 The Pirates 」「ガス Gas」(ガス?何だ、ガスって)。オフィシャル・サイト。ディヴィジョン3。
 ここで気になってくるのは、「来週はモリニュー競技場から、アジア・アフリカ諸国の首脳4人 VS ブリストル・ローヴァー*4の模様をお送りいたします」。これを見たときは、「首脳陣とサッカーチームが対決したら、そりゃ確かに面白いよな、うん」と納得したんですが、甘かった…。というわけで、もう一度、akkoさんにご登場して頂きます。
「わたしが同僚のエディンバラ人にさりげなく『ローヴァーってどんなチームなん?』と尋ねた瞬間彼は『ローヴァー、うはははははははあれはチームなんかじゃないダメの集まりなんだ〜』と爆笑しました。つまりそういうチームなんです」。
 上記のセリフを「無理矢理」解釈すれば、「アジアとアフリカ諸国首脳対南海ホークスの模様を名古屋球場からお送りします」という感じになるそうです。う〜む、そうか〜。あ、名古屋市民ならびに、故南海ホークス・ファンの皆様、深く考えないで下さいね。名古屋は食べ物が美味しくて好きだみゃー(逆撫で)。
「とにかくこういう背後の事情を一瞬にして説明抜きで理解させ『ローヴァー@モリニュー』一発で笑わせる、というのがパイソンズです。言ってみれば巨大なうちわうけです」。
私(カバコフ)が残念に思うのは、日本で「空飛ぶ」を眺めてるだけでは、こういう階級差や言葉遣い、地方に関するネタの面白さが実感できないことですねぇ…。(にもかかわらず、極東のジャップも笑わせられるところが、彼らのすごいところと思います)。ネタの解説には賛否両論あるかもしれませんが、やっぱり知らないよりも、知っていた方が何かとトクだなぁと。そういうわけですので、皆様も何かご存じであれば、掲示板などで、どんどん教えていただけると嬉しいです。
 最後になりましたが、いろいろと分かりやすく解説してくださったakkoさん、本当にありがとうございました(説明のほとんどをコピペしてしましました)。   →戻る

  この詳しい解説を頂いた、akkoさんのThe Total Frontal John Cleeseは、モンティ・パイソンとジョン・クリーズの濃厚な情報   がみっちりとつまっている、ファン必見のサイトです。ぜひ、どうぞ!
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