| ■新しいガスコンロ |
| 空飛ぶモンティ・パイソン 第14話(U−1) |
インタビュア Interviewer :エリック・アイドル
大臣 Minister :グレアム・チャップマン
フォスター元帥 Sir Vincent :ジョン・クリーズ
ピネット夫人 Mrs.Pinnet :テリー・ジョーンズ
ガスコンロ配達員1 First Gas Man :マイケル・ペイリン
ガスコンロ配達員2 Second Gas Man :グレアム・チャップマン
ガスコンロ配達員3 Third Gas Man :ジョン・クリーズ
ガスコンロ配達員4 Forth Gas Man :エリック・アイドル
ガスコンロ配達員5 Fifth Gas Man :テリー・ギリアム
画面:インタビュアがいすに座っている。
キャプション:報道特集 FACE THE PRESS
- インタビュア(エリック)
- こんばんは。今夜の「報道特集」では、現代的な問題に対する2つの異なる見解について考えてゆきたいと思います。私の左手に座っておられるのが、住宅大臣です。今夜、お召しになっていらっしゃるのは、ピンクのチュールを用いた素晴らしいオーガンザのドレス。首もとに輝くパールと模造ダイヤのネックレスは、ドレスにもよく似合っておりますね。
大臣(グレアム)が映る。大臣は口ひげを生やし、女装している。メロウなムードの音楽が流れ始める。
- インタビュア(エリック)
- 豚革の靴はボンド・ストリートのマクスウェル製で、金のホックがあしらわれています。ヘア・アレンジはロジャーによるもの。豪華なクリスマス・ランのコサージュが全体を華やかにまとめ上げていますね。私の右手にいらっしゃるのが、政府に対して反対論を唱える茶色の小さなシミです(画面には、椅子の上の茶色いシミが映る)。クレオソートか工場のニス塗りで使用された抽出物のようなものではないかと思われます。(茶色のシミに向かって)こんばんは。さて大臣、最初の質問をしてもよろしいでしょうか?大臣の打ち出した政策「国民のためのより良きブリテン建設計画」では、1年のうちにロンドン中心部だけでも住宅800万億戸を建設すると公約されました。しかし、実際に建てられたのは、過去15年間でたった3戸です。この結果には、大臣ご自身も失望されたのではありませんか?
- 大臣(グレアム)
- いや、いや。この質問については、二通りの回答が用意してある。一つは普通の声。もう一つは、キンキンのバカ声。(と、大臣は普通の声で答え始める)。ご存じの通り、住宅問題というものは実に…。
インタビュア(エリック)が映り、大臣の声だけが聞こえてくる。再び、ムード音楽が流れ出す。
- インタビュア(エリック)
- それでは、質問にお答え頂いている間に、私が大臣のファッションについて、ご説明いたしましょう。300ピース以上ものアラビアン・シルクを使用したこのドレスは、全てがハンドメイドで縫製されており(と、ここで、画面の外から聞こえてくる大臣の声がキンキンのバカ声に変わる)、パリのヴァーガー社が大臣のために特別に仕立てたものです。肩を広く開けた胸元のラインはほっそりとして、大臣の鎖骨を何とも美しく見せていますね。それでは大臣の回答もそろそろ終わりそうですので、ディスカッションへ戻ることにいたしましょう。大臣、ありがとうございました。(カメラの方を向いて)さて今夜お会いするのは、新しく…。
- 大臣(グレアム)
- (インタビュアに詰め寄って)もう出番はないの?
- インタビュア(エリック)
- ないっ!今晩、出演して頂くのは、新しく連合軍爆撃司令長官に任命された航空大将のヴィンセント’ジャップ殺し’フォスター卿です。フォスター大将にはバーミンガムのスタジオにお越し頂いております。
画面:フォスター元帥(ジョン)が映ったモニター映像。彼も派手な女装をしており、羽扇を持っている。彼のそばには団扇をもった付き人が立っている。
- フォスター元帥(ジョン)
- ハロー、水兵さん!ちょっと聞いてよ、何があったと思う?大臣がアタシを英国空軍の長官に任命しちゃったのよ。
フォスター元帥が映っている画面は、そのまま居間におかれたテレビセットの画面となる。部屋では、スカーフにエプロン姿のピネット夫人が、そのテレビを見ている。
呼び鈴がなると、ピネット夫人はテレビのスイッチを消して、玄関ドアを開ける。そこには、頭に斧をさし、山羊をつれた奇妙な格好の男が立っている。
- 山羊を連れた男
- こんちは。あんた、ロジャースさん?
- ピネット夫人(テリーJ)
- 違うわよ。あら、やだ。私、家を間違えちゃったんだわ。
ピネット夫人はドアを閉めると、部屋を横切り、窓をよじ登って、家の裏庭に出る。彼女は裏庭にある壁も乗り越えて、隣家の裏庭へ出る。そして、窓によじ登り、その家の居間に入る。
その部屋にもテレビ・セットが置いてあり、先ほどのフォスター元帥のインタビューを放送している。ピネット夫人は、テレビの前に置かれたソファーに座る。
- フォスター元帥(ジョン)
- そうねぇ、これからはアタシのやり方でやっていくつもりよ。まず、デヴィット・ホックニーにミサイルのデザインをお願いしちゃうわ。それから…。
呼び鈴が鳴る
- ピネット夫人(テリーJ)
- (カメラに向かって)新しいガスコンロが来たんだわ。
ピネット夫人がテレビを消す。すると仰々しい音楽が流れ出す。
キャプション:(『ベン・ハー』のような石組みのロゴで)新しいガスコンロ・スケッチ
NEW COOKER SKETCH
ピネット夫人がドアを開けると、外には新しいガスコンロを運んできた二人の配達員が立っている。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- こんちは。G.クランプさん?
- ピネット夫人(テリーJ)
- いいえ、私はG.ピネットよ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- ここはエジノン街46番地ですよね?
- ピネット夫人(テリーJ)
- いいえ、エジノン通りよ。「通り」。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- (書類を見ながら)「通り」ね。ああ、そう書いてある。よし。G.クランプさんはいらっしゃる?
- ピネット夫人(テリーJ)
- ここには、そんな名前の人はいないわ。私がG.ピネットよ。エジノン通り46番地の。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- でも、ここにはクランプって書いてある。そうだよな、ハリー?
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- ああ、送り状にそう書いてある。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- うん、確かにクランプとある。
- ピネット夫人(テリーJ)
- じゃあ、何かの間違いよ。だって、住所はあってるし、それにそのガスコンロは私が注文したやつだもの。青と白のコンロ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- でも渡せないな。ここにはクランプって、書いてある。
- ピネット夫人(テリーJ)
- まあ、それならどうすればいいのよ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- どうしたもんか。俺たちが出来ることと言ったら、コンロをいったん倉庫に戻してから、配送伝票をクランプからピネットに直して、特別配送に回すことかな。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- それが一番いいだろう。今日、持ち帰れば、10週間後にはコンロを届けられると思うよ。
- ピネット夫人(テリーJ)
- 10週間なんて、とんでもない!これを置いていくわけにはいかないの?
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- コンロを置いていけって言うのかい?
- ピネット夫人(テリーJ)
- そう。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- わからんな。出来るとは思うが…。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- でも仮配送伝票の記入が必要だろ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- この仮配送伝票にサインして貰えれば、コンロを置いていけるんですけど。
- ピネット夫人(テリーJ)
- それで解決するのね。何て面倒なんでしょ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- いや、我ながら馬鹿げてるとは思うけどね、全く。お役に立てて嬉しいよ。よし、それじゃあ、この下にサインしてもらえますか、クランプさん。
- ピネット夫人(テリーJ)
- ピネットよ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- ピネットさんね。でも、伝票処理が上手くいくように、「クランプ・ピネット」ってサインして貰えないかな?
- ピネット夫人(テリーJ)
- いいわよ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- これでよし、と。ありがとうございます。これでガスコンロは奥さんのものです。ありがとうございます(と言いながら、ガスコンロを部屋の中へ運び込む)。わずらわせちゃって、すまなかったね。さ、どうぞ。それじゃ、失礼しますよ。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- じゃあね、奥さん。
- ピネット夫人(テリーJ)
- あ、ちょっと待ってよ。ねえってば。コンロを台所に取り付けてくれないの?
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- なんです?
- ピネット夫人(テリーJ)
- ガス栓につないでもらわなきゃ、料理が出来ないわ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- 奥さんがコンロ取付書類を持っているのか、確かめてなかったな。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- MIだ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- MIってやつがないと、コンロに触ることも出来ないもんで。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- それかR16。
- ガスコンロ配達員3(ジョン)
- (配達員1、2の背後から突然に現れて)そいつが、特別配送だったらの話だがね。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- これは特配じゃない。特配は倉庫に返送することだからな。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- いや、特配は、それ自体が取付書類のようなもんだ。
- ガスコンロ配達員3(ジョン)
- そう、それがR16。
- ピネット夫人(テリーJ)
- 取付書類って何よ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- ピンク色の書類なんすが。
- ピネット夫人(テリーJ)
- ああ、それなら、あったと思うわ。ええっと、これが書類やらなんやらなんだけど(と言いながら書類の束を持ってきて、その中からピンク色の紙を取り出す)。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- それですよ、奥さん。それが要るんです。いや、待てよ。これにはピネットと書いてある。G.ピネット。
- ピネット夫人(テリーJ)
- そりゃそうよ。わたしはG.ピネットだもの。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- 仮配送伝票の方は、クランプ・ピネットでサインしてある。
- ピネット夫人(テリーJ)
- じゃあ、こっちにもクランプ・ピネットってサインしましょうか?
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- だめ、だめ。MIはまずいよ。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- このコンロは、レディング Reading の配送エリアから届いたやつかい?
- ガスコンロ配達員4(エリック)
- いや、チェルトナム Cheltenham じゃないか?
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- 通りのこっち側は違うだろ。
- ピネット夫人(テリーJ)
- ねえ、私はガス栓につないで欲しいだけなのよ。
- ガスコンロ配達員3(ジョン)
- ロンドン本部はどうだろう?
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- いや、あそこには機械がないからな。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- 今はないね。
- ガスコンロ配達員5(テリーG)
- ハウンズロー・エリア Hounslow の配送倉庫は?
- ガスコンロ配達員4(エリック)
- あそこはまだ標準電圧だし。
- ガスコンロ配達員6
- トウィッケナム Twickenham 地区も、同じ電圧だろ。
- ピネット夫人(テリーJ)
- でも、それなら、コンロをガス栓につなげるんでしょ?
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- まあ、そうなんですけどね、奥さん。緊急事態じゃないとダメなんですよ。
- ピネット夫人(テリーJ)
- 今だって、十分、緊急事態じゃない。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- 違うんだな。第290条に、緊急とは「実際に、もしくは明らかに可燃性ガスの漏失が認められる場合」と書いてある。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- いわゆるガス漏れってやつ。
- ガスコンロ配達員7
- (突然、入ってきて)第478条にも書いてある。
- ガスコンロ配達員3(ジョン)
- それは、バルブ調節の間違いだろ。
- ピネット夫人(テリーJ)
- でもガス栓につながなきゃ、ガスも漏れようがないじゃない。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- それには、まずガス栓を開ける必要があるな。
- ピネット夫人(テリーJ)
- ガス栓を開けてから、コンロをつなぐわけにはいかないの?
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- 難しいね。でも、出来ないこともない。奥さんと私の仲だから言っちゃうけどね、…本当はこんなこと教えちゃまずいんだけど、ガス栓をひねって、パイプに穴をあける。それから、ハウンズローに電話で緊急を知らせれば、やっこさんたち、2日でこっちに来ますぜ。
- ピネット夫人(テリーJ)
- 部屋中がガスでいっぱいになっちゃうじゃない。来て貰う前に死んじゃうわよ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- あ、でも死ねば、南西地区のマネージャーがすっ飛んでくるよ。
- ピネット夫人(テリーJ)
- ほんと?
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- 本当ですとも。「一人もしくはそれ以上がガスにより意識不明に陥った場合」、ホルボーン Holborn 地区の支店長が奥さんのところにやってくるんです。
- ピネット夫人(テリーJ)
- ほんと?
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- ええ、これは殺人だからね。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- あるいは自殺。
- ガスコンロ配達員5(テリーG)
- 違うよ、そりゃS42だ。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- そうか。
- ガスコンロ配達員8
- (突然、入ってきて)待てよ。そいつはヘイノルト Hainault だと思ったが。
- ガスコンロ配達員5(テリーG)
- いや、中央地区とサウソール Southall 販売部じゃないのか、S42を担当しているのは。
- ピネット夫人(テリーJ)
- そこなら、ガスコンロも取り付けてくれるのね。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- ええ、いろいろやってくれますよ。
- ピネット夫人(テリーJ)
- 午後には来て貰えるかしら?
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- 今が11時半だから…、殺人だと…、2時には来られると思いますよ。
- ピネット夫人(テリーJ)
- まあ、大助かりよ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- じゃあ、奥さん。横になってください。
- ピネット夫人(テリーJ)
- いいわ(と、床に寝ころぶ)。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- いいぞ、ハリー。
- ガスコンロ配達員2(グレアム)
- オーケー。栓を開けるぞ。
- ガスコンロ配達員1(マイケル)
- (ピネット夫人の口にガス・ホースを入れながら)そう、大きく深呼吸して。ノーマン、支店長に連絡してくれないか。
- ガスコンロ配達員4(エリック)
- 僕がメンテナンスに電話しようか。
- ガスコンロ配達員5(テリーG)
- デットフォード Deptford のメンテナンスの方がいいよ。
- ガスコンロ配達員6
- ペッカム Peckham 地区を担当しているのは207の…
画面:家の外。玄関からは同じ格好をした配達員の長蛇の列が出来ていて、伝言ゲームのようにメッセージを順々に伝えている。
- 配達員たちの声
- そりゃ、ルイシャム Lewisham だ。トテナム Tottenham は?それは5・4だろう。ルイシャムはどうなんだ?そこは中央区じゃなかったっけ?それともルイスリップ
Ruislip ……
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