| ■職業相談所 |
| 空飛ぶモンティ・パイソン 第10話(T−10) |
カウンセラー Counsellor :ジョン・クリーズ
アンチョビ Anchovy :マイケル・ペイリン
ナレーション Voice Over :テリー・ジョーンズ
- 歌声
- (キーを少しずつ上げながら)職業相談カウンセラー〜、職業相談カウンセラー〜、職業相談カウンセラー〜。
場面:オフィス。カウンセラー(ジョン)が机に座っている。その側では、アンチョビ(マイケル)が立って待っている。カウンセラーは時計を見た後、アンチョビ氏に気付く。
- カウンセラー(ジョン)
- ああ、アンチョビさん、お掛け下さい。
- アンチョビ(マイケル)
- すみませんね。足を楽にさせてもらいますよ。
- カウンセラー(ジョン)
- どうぞ。
- アンチョビ(マイケル)
- 全くもって、カウンセリングにはうってつけのお天気ですね。
- カウンセラー(ジョン)
- 浮かれた戯言はそこまで。さて、アンチョビさん。あなたの適職について、アドバイスして欲しいということでしたが。
- アンチョビ(マイケル)
- ええ、そうです。
- カウンセラー(ジョン)
- 先週、受けていただいた面接と適性テストの結果が出ています。そこから、あなたがどんなタイプの人間であるかも、かなり明確につかむことが出来ました。私が自信をもって申し上げましょう。あなたの理想的職業は、公認会計士です。
- アンチョビ(マイケル)
- でも、私は今、公認会計士をやっているんですが。
- カウンセラー(マイケル)
- それは、すばらしい。どうぞ職場にお戻り下さい。
- アンチョビは一旦、席を立ちかけるが、すぐに戻る。
- アンチョビ(マイケル)
- 違う、違う。分かってませんね。私は20年間も公認会計士をやってきたんですよ。新しい仕事を始めたいんです。何かこう、「生きてる」って実感できるような、エキサイティングな仕事を。
- カウンセラー(ジョン)
- 公認会計士も、かなりエキサイティングな職業だと思いますが。
- アンチョビ(マイケル)
- エキサイティング?とんでもない。退屈ですよ。退屈、タ・イ・ク・ツ。そりゃ、もう退屈。救いがたいほど退屈。単調で、これっぽちも面白くない。ウンザリだ。死ぬほど、つまんないんですよ。
- カウンセラー(ジョン)
- まあ、仰ることは分かりますがね、アンチョビさん。検査結果を見ますと、あなた自身もかなり退屈な人間なんですよ。いいですか、検査士によると、あなたの性格は驚くほど退屈。想像力に欠け、臆病、指導力も決断力も無い。卑屈で、ユーモアのセンスもゼロ、社交性に乏しく、我慢がきかない上に、だらしがない。ところがですよ、大抵の職業において致命的であるこうした欠点も、公認会計士に限っては、この上ない長所となるんです。
- アンチョビ(マイケル)
- でも、私がここへ来たのは、新しい職業を見つけるためなんです。新しい人生、新しい存在意義。助けてくれますよね。
- カウンセラー(ジョン)
- んー、何かやりたい職業でもあるんですか?
- アンチョビ(マイケル)
- ありますとも。
- カウンセラー(ジョン)
- 何です?
- アンチョビ(マイケル)
- (自信満々に)ライオンの調教師。
- カウンセラー(ジョン)
- あ…、そう。これはまた、随分と飛躍しましたね。公認会計士からライオンの調教師ですか。もう少し段階を踏んで、ライオン調教師を目指した方がよろしいのでは?例えば、まず銀行員に転職するとか。
- アンチョビ(マイケル)
- だめ、だめ。待ちきれません。明日の9時には、もう調教の仕事を始めたいんです。
- カウンセラー(ジョン)
- 分かりました。でも、資格みたいなものは持ってらっしゃるんですか?
- アンチョビ(マイケル)
- ええ、帽子を持ってます。
- カウンセラー(ジョン)
- 帽子?
- アンチョビ(マイケル)
- 帽子です。ライオン調教師ハット。ちゃんと「ライオン調教師」って書いてある帽子で、ハロッズで買ったんです。ネオン管で大きく「ライオン調教師」と書いてあってね、光るようになっています。おかげで、ライオンがおとなしくなる夜間にも調教が出来るんです。
- カウンセラー(ジョン)
- なるほど。
- アンチョビ(マイケル)
- 昼間はスイッチを切っておくことも出来ます。通常範囲内の消耗だったら、経費で落とせますしね。そのことは、第335項にも書いてあります。
- カウンセラー(ジョン)
- なるほど。しかし、一つ問題があります。もし、あなたがここでチッパーフィールドさんに電話をかけて、「私は45歳の公認会計士だが、ライオン調教師になりたい」と言ったとしましょう。その時、チッパーフィールドさんが最初に訊くのは、帽子を持っているかではありませんよ。ライオン調教師としての経験があるかどうかです。
- アンチョビ(マイケル)
- ライオンなら動物園で見ました。
- カウンセラー(ジョン)
- それは結構。
- アンチョビ(マイケル)
- ちっちゃくて、茶色い毛皮の生えたやつでね。足は短くずんぐりしていて、鼻が長かったな。どうして、あんなのを怖がるのか不思議です。私なら立派に調教してみせます。他の動物なんかより調教しやすそうに見えますがね。
- カウンセラー(ジョン)
- それで…、そのライオンはどのくらいの大きさでしたか?
- アンチョビ(マイケル)
- (膝ぐらいの高さを指して)こんなもんだったかな。ちっとも怖いことなんかありません。
- カウンセラー(ジョン)
- そうですか。で、そのライオンはアリを食べてましたか?
- アンチョビ(マイケル)
- ええ、食べてました。
- カウンセラー(ジョン)
- なるほど…。アンチョビさん、…恐らく、あなたがご覧になったのはアリクイです。
- アンチョビ(マイケル)
- なに?
- カウンセラー(ジョン)
- アリクイ。それはライオンなんかじゃありません。ライオンは大きくて、残酷な猛獣です。高さは5フィート、全長は10フィート、体重は約400ポンド。時速40マイルで走り、沢山の鋭い歯と危険な爪を持っています。「エリック・ロビンソン*1」と叫ぶ間もなく、あなたの腹は引きちぎられてしまいますよ。お見せしましょう。
カウンセラーは、アンチョビにライオンの写真を見せる。すると、アンチョビは叫び声をあげて、机に突っ伏してしまう。
- カウンセラー(ジョン)
- それでは木の時間です。
画面:カラマツの写真
- ナレーション(テリーJ)
- カラマツ。(画面には「カラマツ The larch 」というキャプションが現れる)。
画面:再びオフィス。アンチョビが起きあがる。
- カウンセラー(ジョン)
- チッパーフィールドさんに電話します?
- アンチョビ(マイケル)
- いや、結構です。あなたの言うとおり、もう少し別の仕事をやってから、ライオン調教師になろうかなあ、なんて。例えば、保険業とか…。
- カウンセラー(ジョン)
- 銀行とか。
- アンチョビ(マイケル)
- そう、銀行。銀行、これこそ男の生きがいだ。銀行、旅行、興奮、冒険、スリル、人の心を駆り立てる決断の数々。
- カウンセラー(ジョン)
- そうですとも。それでは、銀行に連絡を取ってみましょうか?
- アンチョビ(マイケル)
- ぜひとも。
- カウンセラー(ジョン)
- それでは(と、机上の電話に手を伸ばそうとする)。
- アンチョビ(マイケル)
- いや、いや、ちょっと待って下さい。これは重大な決断ですからね、2週間ぐらい考える時間が欲しいような…。いや、早まるのはよくないな。3週間は必要ですね。そのときに返事します。今は、ハッキリした答えを出したくないんです。私は…(と、神経質にブツブツと独り言を言い続ける)。
- カウンセラー(ジョン)
- (カメラにむかって)これは、我々が公認会計士ついてまとめた本の中に、多く見受けられるケースの一つです。この恐るべき社会病と闘う唯一の手だては、人々に問題の深刻さを知らしめ、若い世代にそれがいかに無益であるかを教えることです。そこで、どうか下記の住所まで寄付を賜りたく思います。公認会計士と闘う会:ロンドン南東3区、バジル・ストリート、リンカン・ハウス55番地
- キャプション
- 「公認会計士と闘う会」
- ロンドン南東3区、バジル・ストリート、リンカン・ハウス55番地
- *1 エリック・ロビンソン Eric Robinson
- って、誰なんでしょう?笑いがおこっているところを見ると、何かのネタのようですが。あれこれ調べてみましたが、分かりませんでした。ご存じの方、情報をお待ちしております。予想:1960年代にイギリスで放映された冒険ドラマに登場する英雄ハンター、とかね。→戻る
|