■あなたもコントに出演しませんか?   
空飛ぶモンティ・パイソン 第10話(T−10)

男性 Man :マイケル・ペイリン
Wife :テリーJ・ジョーンズ
強盗 Robber :ジョン・クリーズ
店員 Assistant :エリック・アイドル


画面:下着屋のセット。

店員(エリック)と強盗(ジョン)がカウンターのそばに立っている。時々、腕時計を見ながら、ため息をつく2人。

画面:台所。BBCの社用便せんがアップになる。カメラが引くと、食卓に座って手紙を読んでいる男性(マイケル)と、忙しそうに動き回っている彼の妻(テリーJ)が映る。

男性(マイケル)
おいおい。
妻(テリーJ)
あら、どうしたんです?
男性(マイケル)
BBCからだよ。テレビのコントに出る気はないか、だとさ。
妻(テリーJ)
まあ、すてき。
男性(マイケル)
どこが?演技するんだぞ。
妻(テリーJ)
そうよ。
男性(マイケル)
おらぁ配管工だぞ。演技なんか出来るわきゃない。
妻(テリーJ)
やってみなくちゃ分からないじゃないですか。ほら、お隣のブランドさんとこの息子さん。冷蔵庫の修理をしているときに、『乱暴者 Wild One 』*1に出演しないかって、言われたそうよ。で、あなたは何をやるの?
男性(マイケル)
ん〜、カウンターに立って、コントが始まったら出ていって欲しいとさ。
妻(テリーJ)
あら、良さそうじゃない。通行人役 walk-on ってことね。
男性(マイケル)
通行?これじゃ、退場 walk-off だよ。

画面:下着屋のセット。店員(エリック)と強盗(ジョン)は相変わらず待ちぼうけをくらってウンザリしている様子。フロア・マネージャーが、セット内にやって来る。

強盗(ジョン)
おいおい、やっこさんはどうしたんだ、ジョージ?
フロア・マネージャー
いや、分からないんだ。1時間前にはスタジオ入りしているはずなんだが。
強盗(ジョン)
ちゃんと来てもらわないと困るよ。

画面:台所

妻(テリーJ)
他には、なんて書いてあるの?
男性(マイケル)
「コントに出演して頂ければ幸甚です。貴殿にはカウンターに立って頂き、コントが始まり次第、退場となります。敬具」って書いてあるだけだ。
妻(テリーJ)
あらあら、それなら、もう行かないと。
男性(マイケル)
ああ。だけど、ほら、ネコはどうする?
妻(テリーJ)
ネコのことなら、私がやっておきますから。ほんとにアナタって人は…。ニューマンさんの長男坊だって、『渇いた太陽 The Sweet Bird of Youth』*2に出演するのに、ネコの心配なんかしませんでしたよ。
男性(マイケル)
わかった、わかったよ。じゃ、行ってくるからな。
妻(テリーJ)
いってらっしゃい。浮気しちゃダメよ。

男性(マイケル)が出ていくと、妻(テリーJ)はいそいそとテレビの前に座る。

妻(テリーJ)
これで配管工から転職できるかもしれないわ。おじいちゃーん、フランクがテレビに出ますよー。

妻(テリーJ)がテレビをつけると、画面には先ほどの下着屋が映る。

下着屋では強盗(ジョン)、店員(エリック)、フロア・マネージャーが待っている。そこへ男性(マイケル)がやってくると、フロア・マネージャーは彼に立ち位置などを指示して、キューを出す。

男性(マイケル)が下着屋のドアから、出ていく。

妻(テリーJ)
もう消えちゃった。

画面:下着屋。ボーダーシャツ姿の強盗がドアの窓枠を素通りして、店内に入ってくる。それからカウンターにいる店員にピストルを突きつける。

強盗(ジョン)
こんにちは。私は銀行強盗をやっている者です。え〜、どうぞお騒ぎにならず、あなたのお金をこちらに渡して頂ければと存じます。
店員(エリック)
当店は下着屋でございますが…。
強盗(ジョン)
左様でしたか、結構、結構です。(カメラに向かって、自分に言い聞かせるように)受容、適応、そして改善。円卓の騎士のモットーでいこう。(店員に向かって)ええっと、…何がございますでしょういか?
店員(エリック)
コルセット、ストッキング、サスペンダー・ベルト、タイツ、ブラジャー、スリップ、ペティコート、靴下、ソックス、ガーターなどを取りそろえております。
強盗(ジョン)
それは結構、結構。実に結構。金庫のなかに、札束などはありませんよね?
店員(エリック)
ございません。
強盗(ジョン)
預金通帳も?
店員(エリック)
置いておりません。
強盗(ジョン)
キャリー・バッグの中に現金などは?
店員(エリック)
まったくございません。
強盗(ジョン)
食券も?
店員(エリック)
あいにく。
強盗(ジョン)
結構、結構。ん…、受容、適応、そして改善だったよな、うん。それでは、パンティーを2枚頂けますか?


*1 『乱暴者(あばれもの)』 Wild One
未見のくせに注釈をつけるのもなんですが、マーロン・ブランド主演・ラズロ・ベネディック監督の米国映画(1953年)。田舎町で繰り広げられる暴走族同士の抗争と、その一団のリーダーであるジョニーの恋を描いた作品。『イージー・ライダー』の先駆けともなりましたが、当時の英国では検閲に引っかかってしまっため、1967年になって、ようやく公開されたそうです。→戻る
*2 『渇いた太陽 』  The Sweet Bird of Youth
テネシー・ウィリアムズの戯曲を、ポール・ニューマン主演・リチャード・ブルックス監督で映画化(1962年)。ポール・ニューマンが、落ちぶれた女優のジゴロとなって、一切の面倒をみながら、自身のハリウッド進出をねらう、というストーリーらしいです。こちらも未見なんで、違うかもしれません。→戻る

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