| ■死んだオウム |
| 空飛ぶモンティ・パイソン 第8話(T−8) |
プラリーヌ Praline :ジョン・クリーズ
店主、ヒゲの店主 Shopkeeper :マイケル・ペイリン
駅員 Porter :テリー・ジョーンズ
大佐 Colonel :グレアム・チャップマン
- アニメーション
- ボッティチェリ『ヴィーナス誕生』のヴィーナスが貝の上で踊っていたが、海の中に落ちてしまう。画面は実写に切り替わり、ヴィーナスはそのまま、ペットショップの水槽の中に落ちてくる。
画面:ペットショップ。鳥かごを持ったプラリーヌ(ジョン)が店内に入ってくる。それを見たペットショップの店主(マイケル)は、レジの後ろにコソコソと隠れる。
- プラリーヌ(ジョン)
- 失礼、ちょっと言いたいことがあるんだが…。ちょっと、お嬢さん。
- 店主(マイケル)
- お嬢さんって、どういう意味?
- プラリーヌ(ジョン)
- ああ、失敬。風邪をひいてしまってね。私は苦情を言いに来たんだ。
- 店主(マイケル)
- すみませんが、昼休みなもんで。
- プラリーヌ(ジョン)
- 気にするな。まだ30分もたっていないと思うが、さきほど貴店からオウムを購入した。そのオウムのことでひとこと言いたい。
- 店主(マイケル)
- ああ、ノルウェイジャン・ブルーね。何か、まずいことでも?
- プラリーヌ(ジョン)
- まずいことがあったから、こうして言いに来てるんだ。オウムが死んでる。これが、その「まずいこと」だ。
- 店主(マイケル)
- 何を言うんですか、休んでるんですよ。
- プラリーヌ(ジョン)
- いいかね。このオウムが死んでいることは、見れば分かる。今だって、ご覧の通りだ。
- 店主(マイケル)
- だから違いますって。死んでません。休んでるんです。
- プラリーヌ(ジョン)
- 休んでる?
- 店主(マイケル)
- そうですとも。ノルウェイジャン・ブルーは珍しい鳥でしてね。この羽根の美しいことと言ったら。
- プラリーヌ(ジョン)
- 羽根のことを言ってるんじゃない。このオウムは、完全に死んでいる。
- 店主(マイケル)
- いいえ、眠っているだけです。
- プラリーヌ(ジョン)
- そうか。眠っているなら、起こそうじゃないか。(鳥かごに向かって)オハヨー、オウムちゃん。お目々を覚ましたら、おいしいイカをあげますよ〜。オウムのポリーちゃん〜。
- 店主(マイケル)
- (鳥かごを突いて)ほら、動いた。
- プラリーヌ(ジョン)
- オウムじゃない。あんたが鳥かごを押したんじゃないか。
- 店主(マイケル)
- 押してません。
- プラリーヌ(ジョン)
- いいや、押した。(オウムを鳥かごから取り出して)オハヨ〜、ポリーちゃん〜。(オウムを店のカウンターに叩きつけて)オウムのポリーちゃん〜、起っきしましょうねぇ。ポリーちゃん〜。(オウムを宙に放り投げて、床に落とす)これを死んだオウムと言わずして、何と呼ぶ?
- 店主(マイケル)
- いいえ、気絶したんですよ。
- プラリーヌ(ジョン)
- あのな、死んでることは今ので、じゅうぶん分かっただろ。このオウムは明らかに死亡してるの。私がさっき買いに来たとき、オウムが動かないのは、喋り続けてクタクタに疲れてるからだって、保証したじゃないか。
- 店主(マイケル)
- フィヨルドが恋しいのかも。
- プラリーヌ(ジョン)
- フィヨルドが恋しいだと?何だそりゃ。だったら、家に着いたとたん、オウムが仰向けになって床に落ちたのは、どう説明してくれる?
- 店主(マイケル)
- ノルウェイジャン・ブルーは仰向けで寝るのが好きなんですよ。きれいな鳥でしょ。それに見事な羽根。
- プラリーヌ(ジョン)
- 失礼を承知で調べさせて貰ったがね、どうしてオウムが最初にいた止まり木にずっと立っていられたのか、分かったよ。理由は一つ、オウムが止まり木に釘付けされてたからだ。
- 店主(マイケル)
- そんなの、当たり前じゃないですか。そうでもしなけりゃ、柵をこじ開けて、ブーンと飛んでっちまう。
- プラリーヌ(ジョン)
- いいかね、(オウムを取り上げて)このオウムに4000ボルトの電気をかけたって、飛ぶわけがない。これは、完ぺきにご臨終なの。
- 店主(マイケル)
- いやいや、恋しいんです。
- プラリーヌ(ジョン)
- ホームシックなんかじゃない。お亡くなりになったんだ*1。このオウムは、この世を去ったの。事切れてしまった。息を引き取り、神の御許に逝かれた。これは「故オウム」。死体。命尽きて、永遠の眠りについてる。釘付けされてなきゃ、今頃はひな菊いっぱいのお墓の下でおねんねしてたはずなんだ。オウムはその生涯に幕を閉じ、昇天なされたの。これは「元オウム」。
- 店主(マイケル)
- 分かりましたよ、お取り替えしましょ。
- プラリーヌ(ジョン)
- (カメラに向かって)この国で何か買おうと思ったら、性根尽き果てるまで文句を言うはめになる。
- 店主(マイケル)
- スミマセンね、ダンナ。オウムはちょうど売り切れです。
- プラリーヌ(ジョン)
- そうかい、そうかい。そんなことだろうと思ったよ。
- 店主(マイケル)
- ナメクジならいるけど。
- プラリーヌ(ジョン)
- しゃべるのか?
- 店主(マイケル)
- いや。
- プラリーヌ(ジョン)
- それじゃ、代わりとは言えんだろ。
- 店主(マイケル)
- そうだ、いい考えがある。(カードをプラリーヌに渡しながら)ボルトン Bolton にある、兄貴のペット・ショップに行けば、オウムの代わりを渡せるかもしれない。
- プラリーヌ(ジョン)
- ボルトン?
- 店主(マイケル)
- そう。
- プラリーヌ(ジョン)
- よし、分かった。
プラリーヌはオウムを片手に、店から出ていく。
画面:さきほどの店と、そっくり同じのペットショップ。入り口には「有限会社よく似たペット・ショップ
Similar Pet Shop Ltd.」という看板が掛かっている。店主はヒゲをつけている。
- キャプション
- ランカシャー州ボルトンの、よく似たペット・ショップ
プラリーヌが店に入ってくる。店内をきょろきょろと見回し、床にあった空の鳥かごを見つけて驚く。
- プラリーヌ(ジョン)
- あの、すみません。ここはボルトンですよね?
- ヒゲの店主(マイケル)
- いいえ、ここはイプスウィッチ Ipswich ですよ。
- プラリーヌ(ジョン)
- (カメラに向かって)インター・シティ・レール*2 が聞いて呆れる。
画面:駅の苦情係。駅員の格好をした男(テリーJ)が立っている。
プラリーヌ(ジョン)がやって来て、駅員に話しかける。
- プラリーヌ(ジョン)
- 苦情を言いに来た。
- 駅員(テリーJ)
- そんなこと言われても困るよ。
- プラリーヌ(ジョン)
- 何ですって?
- 駅員(テリーJ)
- 僕は脳外科医なんだ。上司みたいになりたいから、こんなことをしているのさ。
- プラリーヌ(ジョン)
- それって、なんか関係ないんじゃない?
- 駅員(テリーJ)
- (声を低くして)いやあ、放送時間が余らないよう、30分まで引き延ばさなくっちゃいけないんだ。苦労するよ。
- プラリーヌ(ジョン)
- 苦情を言いたい。ボルトン行きの電車に乗ったはずなのに、イプスウィッチに着いてしまったぞ。
- 駅員(テリーJ)
- いいえ、ここはボルトンですよ。
- プラリーヌ(ジョン)
- (カメラに向かって)ペット・ショップの店主め、嘘をついたな。
- 駅員(テリーJ)
- そう、イギリス国鉄は悪くない。
画面:ふたたびペットショップ
キャプション:「有限会社 ちょっと後のペットショップ
A Little Later Ltd 」
プラリーヌ(ジョン)がペット・ショップに入ってくる。
- プラリーヌ(ジョン)
- いま聞いたが、ここはボルトンだぞ。
- ヒゲの店主(マイケル)
- ええ。
- プラリーヌ(ジョン)
- あんた、イプスウィッチだって、言ったじゃないか。
- ヒゲの店主(マイケル)
- ダジャレです。
- プラリーヌ(ジョン)
- ダジャレ?
- ヒゲの店主(マイケル)
- いえいえ、ダジャレじゃありません。ちがうな。ほら、前から読んでも、後ろから読んでも、同じになるやつ。
- プラリーヌ(ジョン)
- 回文?
- ヒゲの店主(マイケル)
- そう、それそれ。
- プラリーヌ(ジョン)
- 回文なんかじゃないぞ。「ボルトン」を下から読んだら、「ントルボ」だ。ぜんぜん関係ない。
- ヒゲの店主(マイケル)
- で、何が欲しいんです?
- プラリーヌ(ジョン)
- いや、もう結構。これ以上、このスケッチのセリフを続けるのはゴメンだ。もっとバカバカしくなるに決まってる。
大佐(グレアム)がスケッチに割り込んでくる。プラリーヌ(ジョン)と店主(マイケル)は、「これは誰だ」という感じで話し合っている。
- 大佐(グレアム)
- その通り。まったくだ。くだらん。くだらなすぎる。ほら、次だ。次に進め。
- *1 お亡くなりになったんだ〜。
- このセリフの原文は次の通り。
- 「It's passed on. This parrot is no more. It
has ceased to be. It's expired and gone to
meet its maker. This is a late parrot. It's
a stiff. Bereft of life, it rest in peace.
If you hadn't nailed it to the perch,it would be pushing up the daisies. It's rung
down the curtain and joined the choir invisible.
This is an ex-parrot.」
- 「死ぬ」に関するイディオムの見本帳みたいなセリフですね。
- go to meet one's maker 神様に会いに行く
- ring down the curtain 幕を閉じる
- push up the daisies 埋葬される(デイジーはお墓によく植えられる花)
- join the choir invisible 見えない聖歌隊に参加する→天国に行く
- このスケッチはグレアム=ジョンによって書かれたもので、ジョンはグレアムのお葬式のとき、このセリフを使って弔辞を読みました。→戻る
- *2 インター・シティ・レール Inter-City Rail
- イギリス内の主要都市を結ぶイギリス国鉄の路線。→戻る
|