| ■ベッド売り場 |
| 空飛ぶモンティ・パイソン 第8話(T−8) |
新郎 Groom :テリー・ジョーンズ
新婦 Bride :キャロル・クリーブランド
ランバード Lambert :グレアム・チャップマン
ヴェリティ Verity :エリック・アイドル
マネージャー Manager :ジョン・クリーズ
店員 Assistant :マイケル・ペイリン
画面:原っぱ。新郎(テリーJ)が新婦(キャロル)を抱えて走っている。新郎は息を切らしながら続け、道路をぬけ、大きなデパートに入り、家具売場に到着。新郎は新婦を降ろし、売場にいた店員に話しかける。
- 新郎(テリーJ)
- すみません、ベッドを買いたいんですが。
- ランバード(グレアム)
- かしこまりました。それでは担当の者を呼びますので。(画面の外に向かって)ヴェリティ!
ヴェリティ(エリック)がやってくる。
- ヴェリティ(エリック)
- いらっしゃいませ。
- 新郎(テリーJ)
- ベッドが欲しいんです。その…、ダブルベッドを。値段は50ポンドぐらい?
- ヴェリティ(エリック)
- 申し訳ございません。一番お手頃なものでも、800ポンドはかかってしまいますが。
- 新郎(テリーJ)
- 800ポンド?
- ランバート(グレアム)
- 一言、申し上げておくべきでしたが、ヴェリティには、物事を大げさに説明するくせがございます。ですから、彼が申し上げるのは、実際よりも10倍大きい数字なんです。それさえなければ、彼はまったく申し分のない店員なんですがね。ええ、まったくもって。ハハハ。
- 新郎(テリーJ)
- なるほど。(ヴェリティに向かって)一番安いものでも80ポンドはかかるんですね。
- ヴェリティ(エリック)
- 800ポンドでございます。
- 新郎(テリーJ)
- で、幅はどのくらいあるんですか?
- ヴェリティ(エリック)
- 幅は60フィートございます。
- 新郎(テリーJ)
- …そう。(愛想笑いをしながら、隣の新婦に向かって)6フィートってことだね。(ヴェリティに向かって)長さは?
- ヴェリティ(エリック)
- 長さでございますか…。(画面の外にいるランバートに向かって)ランバート、このマジョレット・フカフカベットの長さは?
- ランバート(グレアム)
- 2フィートです。
- 新郎(テリーJ)
- 2フィート?
- ヴェリティ(エリック)
- あぁ。お客様にもご承知おき願いたいのですが、ランバートの申し上げる数字は、全て3倍にして、受け取ってくださいませ。こればかりは、いたしかたのないことでして…。それ以外については、本当に優秀な店員なんでございますよ。
- 新郎(テリーJ)
- そうなんですか。
- ヴェリティ(エリック)
- ですから、彼が申し上げた幅2フィートという長さは、実際には幅60フィートになるわけです。
- 新郎(テリーJ)
- …なるほどね。
- ヴェリティ(エリック)
- それから、こちらのベットにマットレスは含まれてございません。
- 新郎(テリーJ)
- マットレスはいくらするんですか?
- ヴェリティ(エリック)
- マットレスの担当はランバートになります。(呼ぶ)ランバート!こちらの20名様に犬小屋をお見せして。
- ランバート(グレアム)
- はい、承知しました。
- 新郎(テリーJ)
- 犬小屋っ?違う、マットレスだよ、マットレス。
- ヴェリティ(エリック)
- いえいえ、ランバートには「犬小屋」と申し付けてくださいませ。「マットレス」と聞くと、彼は紙袋を頭からかぶってしまうんですよ。私の説明不足でございましたね。それさえなければ、まったく、よく出来た店員なのですが。
新郎と新婦はランバートのところへ行く。
- 新郎(テリーJ)
- えーっと、犬小屋を見せて貰いたいんですけど。
- ランバート(グレアム)
- 犬小屋?
- 新郎(テリーJ)
- ええ、犬小屋です。
- ランバート(グレアム)
- 犬小屋ですと、3階のペット用品売場になりますが。
- 新郎(テリーJ)
- いや、そうじゃなくて、「犬小屋」が見たいんだ。
- ランバート(グレアム)
- ですから、3階のペット用品売場にございます。
- 新郎(テリーJ)
- いやいや、本当に犬小屋が欲しいわけじゃないんです。ただ、別の店員さんがそう言わなきゃいけないって…。
- ランバート(グレアム)
- その者は何と申し上げたんです?
- 新郎(テリーJ)
- その…、あなたには「犬小屋」と言うようにって、説明されたんだ。「マットレス」と言う代わりに。
ランバートは紙袋を取りだして、それを頭からかぶってしまう。
- 新郎(テリーJ)
- (あたりを見回して)ち、ちょっと、すみませーん?
- ヴェリティ(エリック)
- 「マットレス」と仰いましたね?
- 新郎(テリーJ)
- え、ええ、ちょっとね。
- ヴェリティ(エリック)
- 「マットレス」とは仰らないでくださいと、あれほどお願いしましたのに。となると、私は茶箱に入らなければ。(ヴェリティは茶箱の中に立ち、「エルサレム」*1を歌い始める)♪そして、古えの時代の足は、緑なすイングランドの山々を歩き〜。
そこにマネージャー(ジョン)がやって来る。
- マネージャー(ジョン)
- 誰か、ランバートに「マットレス」と言ったやつがいるのか?
ヴェリティは歌いながら新郎新婦を指す。マネージャーも茶箱へ入って、歌い始める。すると、ランバートは何事もなかったように紙袋を脱ぐ。2人は歌うのをやめ、マネージャーは警告するように新郎新婦を指さして、去っていく。
- ヴェリティ(エリック)
- あれさえ仰らなければ、ランバートは優秀な店員なんですから…。くれぐれも…。お願いしますよ。
- 新郎(テリーJ)
- (ランバートに向かって)そ、その…。犬小屋を見せて欲しいんです。分かるでしょ。
- ランバート(グレアム)
- ですから、3階にございます。
- 新郎(テリーJ)
- そうじゃなくて。ほら、見て下さい。(と、マットレスと指して)この犬小屋のことです。ねっ?
- ランバート(グレアム)
- マットレス?
- 新郎(テリーJ)
- (ビックリして飛び上がり)えっ、そうですっ。
- ランバート(グレアム)
- マットレスをご所望でしたら、どうして「マットレス」と仰って下さらないんです?混乱するではありませんか。マットレスのことを「犬小屋」とお呼びになるなんて。ふつうに「マットレス」と仰って頂ければよろしいものを。
- 新郎(テリーJ)
- でも、さっきは紙袋をかぶったじゃないですか。私が「マットレス」と言ったら。
ランバートは再び紙袋をかぶる。新郎が決まり悪そうに辺りを見回すと、ヴェリティがやってきて、茶箱に入り、さらにマネージャーも加わって、先程と同じ歌を歌い始める。そこに別の店員(マイケル)もやってくる。
- 店員(マイケル)
- 誰か、ランバートに「マットレス」と言ったの?
- ヴェリティ(エリック)
- (新郎新婦を指さして)2回もね。
- 店員(マイケル)
- みんな、聞いてくれ。ランバートに「マットレス」と言ったヤツがいるぞ。しかも2回!
店員もヴェリティたちの「心理療法」に加わる。
- ヴェリティ(エリック)
- これじゃ、効かないな。みんなも歌ってくれ。
画面:セント・ピーターズ・スクウェアに集まった人々が「エルサレム」を歌っている。
画面:家具売場に戻る。ランバートは紙袋をぬぎ、何事もなかったかのように、新郎新婦に話しかける。
- ランバート(グレアム)
- それで、いかがなさいますか?
- 新婦(キャロル)
- マットレスください。
ランバートは再び、紙袋をかぶってしまう。
- 新婦以外の全員
- 何で、そんなこと言うんだよ。
- 新婦(キャロル)
- (半泣きして)だーって、これしかセリフがないんだもん。
- 新婦以外の全員
- (ピョンピョンと跳ねながら)だからって、言うなよなっ。
- *1 「エルサレム」
- イギリスの画家・詩人ウィリアム・ブレイク
William Brake (1757-1827)が、1804年に書いた詩で、後に愛国的な賛美歌となりました。このスケッチでは「セラピー」として歌われていますが、詩の中には「エルサレムが暗い悪魔のような工場群の中に築かれた」とか「我が炎の戦車を我にもたらせ」という詩句もあったりして、けっこう「革命!」って感じです。→戻る
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