| ■20世紀ハタネズミ社 |
| 空飛ぶモンティ・パイソン 第6話(T−6) |
ラリー・ザルツバーグ Larry Saltzberg :グレアム・チャップマン
脚本家1 Writer1 :マイケル・ペイリン
脚本家2 Writer2 :テリー・ジョーンズ
脚本家3 Writer3 :エリック・アイドル
脚本家4 Writer4 :ジョン・クリーズ
脚本家5 Writer5 :テリー・ギリアム
脚本家6 Writer6 :イアン・ダヴィッドソン*1
- アニメーション
- 20世紀フォックスを真似た、「20世紀ハタネズミ 20th CENTURY
VOLE」のロゴとサーチライト。つづいて、MGMお馴染みのリボンのエンブレム。ただし中央でいるのは吠えるライオンではなく、「ミィッ」と鳴くネズミ。
画面:映画会社の会議室。ラリー・ザルツバーグの大きな顔写真が壁にかかっている。細長い机には、タキシードを着た6人の脚本家が緊張した様子で座っている。
ザルツバーグ(グレアム)が部屋に入ってくる。とたんに、脚本家たちが全員、起立する。
- ザルツバーグ(グレアム)
- おはよう。
- 脚本家全員
- おはようございます。ザルツバーグ先生。
- ザルツバーグ(グレアム)
- まあ、座れ、座れ。いいか覚えとけ、お前たち6人は映画界きっての脚本家だ。
- そこでだ、私がプロデューサーをやる次の映画で、お前たちに脚本を書いて貰いたいと思っておる。
脚本家たちはザルツバーグのもとに駆け寄って、キスをする。
- 脚本家全員
- ありがとうございますっ。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 座れ、こら座らんか。時間はあとでたっぷりやる。(脚本家たちは席に戻る)私のアイデアは…。
- 脚本家3(エリック)
- すばらしい!
- ザルツバーグ(グレアム)
- そう思うか?(と脚本家たちの顔を見回す)。
- 脚本家全員
- (くちぐちに)もちろんですとも。名作ですね。本当に素晴らしい。
ザルツバーグの一番近くに座っている脚本家(マイケル)だけは、何も言わずにいる。
- ザルツバーグ(グレアム)
- (脚本家1に向かって)お前もそう思うか?
- 脚本家1(マイケル)
- え、あ、もちろんです、ええ。
- ザルツバーグ(グレアム)
- どこがいいと思う?
- 脚本家1(マイケル)
- そ、その…、まだ、なにも伺ってないというか…。
- ザルツバーグ(グレアム)
- なんだと?
- 脚本家1(マイケル)
- (自分の左隣に座っている脚本家を指さして)か、彼と同じ意見です。
- ザルツバーグ(グレアム)
- お前はどうだ?
- 脚本家2(テリーJ)
- (隣の脚本家3を指さして)彼と同じです。
- 脚本家3(エリック)
- (隣の脚本家4を指して)彼と同じです。
- 脚本家4(ジョン)
- (隣の脚本家5を指して)彼と同じです。
- 脚本家5(テリーG)
- (隣の脚本家6を指して)私も、彼に激しく同意します。
- 脚本家6(イアン)
- えっと…、わ、わ、私も皆さんと同じ考えです。
- ザルツバーグ(グレアム)
- よかろう!次、いってみよう。映画の冒頭は…、雪だ!(脚本家全員が拍手をする)。白い雪だ!
- 脚本家4(ジョン)
- カラー映画なんですね!
- ザルツバーグ(グレアム)
- そして雪の中にあるは…、木だ!
- 脚本家全員
- (拍手をしながら)そうだ!そうだ!
- ザルツバーグ(グレアム)
- 待て待て。まだ終わっとらんぞ。
- 脚本家3(エリック)
- 続きがあるんですか?
- ザルツバーグ(グレアム)
- 木の隣にいるのは…、犬だ!
- 脚本家全員
- オーレ!
- ザルツバーグ(グレアム)
- そして諸君、犬は木に登り、その上からオシッコをするのだ。
- 脚本家全員
- ハレルヤ!
- 脚本家6(イアン)
- これで完成だ!
- 脚本家5(テリーG)
- 言うことなし!
- 脚本家4(ジョン)
- 傑作だ!
- 脚本家3(エリック)
- 最高!
- 脚本家2(テリーJ)
- すばらしすぎる!
- 脚本家1(マイケル)は何も言わずに、うつむいている。
- 脚本家1(マイケル)
- (ザルツバーグがジッと見ているのに気づいて)え、あ、私も好きです。大好き。
- ザルツバーグ(グレアム)
- で?
- 脚本家2(マイケル)
- いや、その、もちろん私も大好きだな、と。
- 脚本家5(テリーG)
- (立ち上がって)先生、なんと表現すればよろしいのか言葉に困りますが…、私が腹を割って申し上げましょう。
- 正直な話、先生の映画は間違いなく映画史にその名を残す大傑作であります。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 出てけっ!
- 脚本家5(テリーG)
- はい?
- ザルツバーグ(グレアム)
- 何が我慢ならんといって、おべっか使いほど、スカンものはない!とっとと出ていけ!仕事なぞ、二度とやらん!
脚本家5(テリーG)は逃げるように、部屋から駆け出ていく。
- ザルツバーグ(グレアム)
- お前はどう思う?
- 脚本家6(イアン)
- (困った様子で)いや…、その…、私は…。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 私のアイデアがいつも傑作とは限らん。駄作ということだってある。
- 脚本家6(イアン)
- そ、そうですか?
- ザルツバーグ(グレアム)
- そうとも。で、お前はどうだ?
- 脚本家6(イアン)
- 駄作だと思います。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 彼はいま、自分の考えを正直に述べてくれた。私のアイデアは駄目だ、と。
- (突然、語気をあげて)
- そう思うのなら、ここから出ていけ!このアカの破壊活動分子め。出てけっ!
脚本家6(イアン)は部屋から、出ていく。
- ザルツバーグ(グレアム)
- (脚本家4に向かって)お前はっ?
- 脚本家4(ジョン)
- ほ、本当に素晴らしいアイデアだと思います!
- ザルツバーグ(グレアム)
- お前もおべっか野郎か?
- 脚本家4(ジョン)
- いえ、いえ。その…、ちょっと違うような気がしないでもないかなぁ、なんて。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 駄作ってことか、ええ?
- 脚本家4(ジョン)
- い、いえ、もう少し時間を頂ければ。
- ザルツバーグ(グレアム)
- お前は、優柔不断か?
- 脚本家4(ジョン)
- いえ、はい、そうかも。(自分から走って、部屋を出ていく)。
- ザルツバーグ(グレアム)
- お前たち3人には、自分の考えをハッキリと言ってもらいたい!
- 脚本家3人は、机の下にもぐる。
- ザルツバーグ(グレアム)
- テーブルの下で、何やッてんだ?
- 脚本家1(マイケル)
- 鉛筆を落としてしまって…。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 鉛筆を落としだだとぉ?
- 脚本家たち
- 落としてません、落としてません、落としてません、落としてません。
- ザルツバーグ(グレアム)
- さあ、お前たちの考えを言ってみろ。(脚本家1を指さして)お前はどうだ。
- 脚本家1(マイケル)
- ああっ!(気絶して、机に倒れ込む)。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 心臓発作か?
- 脚本家2,脚本家3(テリーJ、エリック)
- そ、そのようで…。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 何が我慢ならんといって、心臓発作になるヤツぐらい腹の立つものはないっ。
- 脚本家1(マイケル)
- (ぱたっと起きあがって)良くなりました。
- ザルツバーグ(グレアム)
- で、お前はどう思ってるんだ?
- 脚本家1(マイケル)
- (脚本家2を指さして)私ではなく、ぜひ彼に訊いてみてください。
- 脚本家2(テリーJ)
- (脚本家3を指さして)いえ、どうぞ彼に。
- 脚本家3(エリック)
- 訊くなら、こちらに(と左を向くが、誰もいないのに気づき、脚本家2を指さして)この彼に。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 気が変わった。お前じゃなく、真ん中のヤツに質問する。
- 脚本家2(テリーJ)
- ま、真ん中っ?
- ザルツバーグ(グレアム)
- そうだ、真ん中だっ。(電話が鳴り、ザルツバーグが受話器を取る)もしもし、ああ、ふむ、なるほど、ディミトリ…。
脚本家3人は、互いに真ん中の席を押しつけ合う。もがくうちに、3人とも重なりあって真ん中の席に座ってしまう。
- ザルツバーグ(グレアム)
- お前ら、何やっとンじゃ!
- 脚本家3(エリック)
- 考え中です。
- ザルツバーグ(グレアム)
- すぐ、もとの席にもどれ。(ふたたび、電話に戻って)ああ、なるほど。
脚本家2(テリーJ)は、両脇を他の脚本家に押さえられて、むりやり真ん中の席に座らされている。ザルツバーグ、電話が終わる。
- ザルツバーグ(グレアム)
- よおし、真ん中のお前だ。お前は私のアイデアについて、どう思う?
- 脚本家2(テリーJ)
- (パニックに陥って)いえ、あの…、ひぇ…。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 早くっ!
- 脚本家2(テリーJ)
- み、み、みすばらしい Splunge!*2
- ザルツバーグ(グレアム)
- コイツは、「みすばらしい」と言ったのか?
- 脚本家1、脚本家3(マイケル、エリック)
- そうです。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 「みすばらしい」というのは、どういう意味だ?
- 脚本家2(テリーJ)
- そ、その、つまり…「素晴らしいというか素晴らしくないこともなきにしもあらずというかともあれ私は優柔不断ではない」という意味です。
- ザルツバーグ(グレアム)
- なるほど。わかった。(脚本家3に向かって)お前はどう思う?
- 脚本家3(エリック)
- ええっと…、みすばらしい!
- ザルツバーグ(グレアム)
- よろしい。
- 脚本家1(マイケル)
- え、えーっと、私もみすばらしいと。
- ザルツバーグ(グレアム)
- つまり、お前たち全員、みすばらしいと思うわけだな。
- 脚本家全員
- そのとおりです!
- ザルツバーグ(グレアム)
- よおし、それでは次だ。いや、まて。新しい線で行こう!わしには見えるぞ。雪景色、そこに立っているのは木じゃなくて、ロック・ハドソン*3だ。そして、犬の代わりに、ドリス・デイだ。ドリス・デイはロック・ハドソンによじ登り、彼に口づける。ラブ・ストーリーだ。イタリア式四十八手。ヒッピー風ゲシュタポ将校にはデヴィッド・ヘミングス*4だ。モロ見えポルノ。家族映画。コメディ。そして、ドリス・デイがロック・ハドソンにキスをして、それから、彼女は何か言うんだ…。なにかおかしな一言を…。(と、脚本家3を見る)。
- 脚本家3(エリック)
- えっと…、こんばんは?
- ザルツバーグ(グレアム)
- ドリス・デイはコメディアンだぞ*5。アナウンサーじゃない!出て行けっ。
脚本家3(エリック)は走り出ていく。
- ザルツバーグ(グレアム)
- 彼女は、何か面白いことを言うんだ(と、脚本家2を見る)。
- 脚本家2(テリーJ)
- みすばらしい?
- ザルツバーグ(グレアム)
- バカの一つ覚えかっ。出てけっ!
脚本家2(テリーJ)も走り去る。
- ザルツバーグ(グレアム)
- ドリス犬はロック木にキスをして、それから一言、言うんだ。(と、脚本家1を見る)
- 脚本家1(マイケル)
- えっ、あっ、わ、私にはもう堪えられませんっ(と、部屋から逃げ出す)。
- ザルツバーグ(グレアム)
- それだ!「私はもう堪えられません」、気に入った。そのあとにロック・ハドソンが言うんだ。「僕はリッチな映画プロデューサー。ロボトミー手術を受けなきゃいけないんだよ」。そしてドリス犬が「あなたって、すっごくハンサムだと思うの。だから、アタシ、服を全部脱いじゃう」と言う。それから、ドリス犬はヤクになって、デヴィッド・レミングのバス・ルームに行くんだ。いやっ、待て。待てよ。(電話の受話器を取る)もしもしーっ。
場面:オープニング冒頭のイッツマンの場面。イッツマンが切り株の上に乗っている電話にでると、ザルツバーグの声が聞こえる。
- ザルツバーグの声(グレアム)
- おい、お前、誰だ。クビにした脚本家か?お前もクビだっ。クレジット・ロールを流せっ!
エンドロールが流れ始め、ザルツバーグがそれを読み上げる。
以下、エンドロール。
プロデューサー
アーヴィング・C・ザルツバーグ・ジュニア
アーヴィング・C・ザルツバーグ・プロダクション
ザルツバーグ・映画石油鉄道不動産金融売春斡旋株式会社
Saltzberg Art Films,Oil,Real,Estate,Banking
and Prostitusition Inc.Co-production
原案
アーヴィング・C・ザルツバーグ・ジュニア
脚本
アーヴィング・C・ザルツバーグ
アーヴィング・C・ザルツバーグ
脚本協力
アーヴィング・C・ザルツバーグ
グレアム・チャップマンバーグ
ジョン・C・クリーズバーグ
テリー・C・ジョーンズバーグ
マイケル・C・ペイリンバーグ
テリー・C・ギリアムバーグ
エリック・C・アイドルバーグ
出演
イアン・C・ダヴィッドソンバーグ
クレジット
アーヴィング・C・ザルツバーグ
リサーチ
サラ・C・ハート・ディケンバーグ
メイキャップ
ジョン・C・バレットバーグ
メイキャップ原案
アーヴィング・C・ザルツバーグ
衣装
ヘイゼル・C・ペシグバーグ・ジュニア
アニメーション
テリー・C・ギリアムバーグ
カメラ
ジェムス・C・バルフォバーグ
編集
レイ・C・ミリチョープバーグ
音声
ジョン・C・ディレニーバーグ
照明
オーティス・C・エディバーグ
デザイン
ジェレミー・C・ディヴィスバーグ
アーヴィング・C・ザルツバーグ節税映画会社認可
Tax Loss Motion Picture Inc.
BBCプロデューサーバーグ
イアン・C・マクノートゥンバーグ(マフィア・フィルム)株式会社ジュニア
Ian C.Macnaughtonberg (mafia film)
Inc.Jnr
エンディングバーグ
BBC C.TVberg.Jnr.
- *1 イアン・ダヴィッドソン Ian Davidson
- 「選挙速報」や「キラー・シープ」など他のパイソン・スケッチにも多数出演した、お馴染みの脇役さんですが、本職はBBCの作家。イアンもオックスフォード・レビューの出身だそうで、マイケルとテリーJの友人でもあったことから、「空飛ぶ」に出演するようになったようです。
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- *2 みすばらしい splunge
- splendid と strange あたりをくっつけた言葉かな…。DVD版の字幕にあった「みすばらしい」は上手いなあと思ったので、そのままお借りしてしまいました。→戻る
- *3 ロック・ハドソン Rock Hudson
- アメリカ映画俳優(1925-1985)。「ジャイアンツ
Giant」(1956)など「武器よさらば A
Farewell to Arms」(1957)などに出演し、その甘い2枚目マスクで人気を得る。1985年、エイズのためパリで死去。その他には、「最後の酋長」(1953)、「ミサイル空爆戦隊」(1963)、「男性の好きなスポーツ」(1964)、「北極の基地・潜航大作戦」(1964)などに出演。まあ、男らしいのね。 →戻る
*4 デヴィッド・ヘミングス David Hemmings
- イギリス出身の映画俳優(1941〜)。最近では、「グラディエーター」(2000)にも出演していたそうです。 →戻る
- *5 ドリス・デイ Doris Day
- コメディアンではありません。アメリカの歌手・映画俳優(1924-)。「センチメンタル・ジャーニー Sentimental
Journey」などをヒットさせ、親しみの持てる歌手として人気を博す。映画では「カラミティー・ジェーン Calamity
Jane」(1953)、「女房は生きていた Move Over
Darling」(1963)などに出演。ヒッチコック監督映画「知りすぎていた男
The Man Who Knew Too Much」でドリスが歌った「ケ・セラ・セラ
Que Sera Sera」は世界的大ヒットを飛ばした。 →戻る
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