| ■ペパーポット、美術展覧会へ行く |
| 空飛ぶモンティ・パイソン 第4話(T−4) |
ジャネット Janet :ジョン・クリーズ
マージ Marge :グレアム・チャップマン
美術評論家 Critic :マイケル・ペイリン
評論家の妻 Wife :KATYA
画面:美術展覧会
- ジャネット(ジョン)
- まぁ、マージ!
- マージ(グレアム)
- こんにちは、ジャネット。元気にしてた?ここで、あなたに会えるなんて。
- ジャネット(ジョン)
- お宅のラルフちゃんは元気?
- マージ(グレアム)
- もう、そのことは訊かないでちょうだい。朝からイタズラばっかり。やめなさい、ラルフ!(マージは画面の外にいるラルフをひっぱたく)。ダメでしょ!
- ジャネット(ジョン)
- うちのケビンといっしょね。
- マージ(グレアム)
- んまっ、お宅も?
- ジャネット(ジョン)
- 面倒ばっかり起こして…。(画面の外のケビンに向かって)それに触るんじゃないの!さっきもフィレンツェ派の展示室に行って来たんだけど、ケビンったら、ラファエロが描いたイエスの絵にケチャップ塗りたくったのよ。(キンキン声でケビンにむかって叫ぶ)そのバロック絵画から、手を離しなさいっ!
- マージ(グレアム)
- うちもコートールド美術館 The Courtauld に行ったんだけど、ラルフがぜーんぶ壊しちゃって。残ったのは、デンマークの現代彫刻一つだけ。
- ジャネット(ジョン)
- ケビンもなのよ。18世紀前半のドレスデン陶器展に連れていったら、この子、そこで暴れ出しちゃって。ダメ、ダメでしょっ!いけないって言ってるのが、分からないのっ!(と、画面の外にいる子供を叩く)。今朝もルネサンスとマニエリスム期のフランドル絵画を見に行ったら、ケビンがフェルメールの『窓辺の女
Lady at a window』に、黒いエアゾール吹きかけちゃって。
- マージ(グレアム)
- そうねぇ。でも、唾を吐くよりはマシじゃなくって?
- ジャネット(ジョン)
- ホント。ケビンも、その辺のことは分かってると思うわ(と、ケビンを叩く)。もし、絵に唾なんか吐いたら、美術展にはもう絶対に連れ行ってあげないって。
- マージ(グレアム)
- ラルフはやっちゃったのよねぇ。30ヤード先のゴッホの絵に唾を飛ばしたの。でも、今は悪かったって、反省しているわ。そうでしょ、ラルフ?(と、画面外の子供を見る)。ラルフ!ダメ、やめなさい!ターナーの絵を食べるんじゃありませんっ!!
もう、あんたって子は…。
マージは子供のほうに行き、画面にはジャネットだけが映っている。画面の外からは、マージが子供を叱る声が聞こえる。
- マージ(グレアム)
- どうして、お前はそんなに悪い子なのっ(子供を叩く音が聞こえる)。
マージが、ターナーの『戦艦テメレール号 Fighting Temeraire』*1を持って、ジャネットの所に戻ってくる。
- マージ(グレアム)
- ねぇ、これ見てちょうだい!『戦艦テメレール号』が壊れちゃったわ!どうしましょっ。
- ジャネット(ジョン)
- 放っておきなさいな。そこの箱にうっちゃっとけば大丈夫よ。
- マージ(グレアム)
- ほんとに?
- ジャネット(ジョン)
- ええ、本当よ、マージ。ケビンも19世紀前半のイギリス風景画を殆ど、たいらげちゃったことがあったけど、そのとき分かったの。別に心配すること無いんだわって。正直言っちゃうと、私もお腹が空いているのよね。(と、『戦艦テメレール号』を食べ始める)。
- マージ(グレアム)
- (マージも食べ始める)ターナーは好きになれないわね。
- ジャネット(ジョン)
- (食べながら)芸術って、よく分かんないわ。自分の好みなら分かるんだけど。
画面は書斎に切り替わる。書斎机の前には評論家が座っており、ユトリロの作品にかじりついている。
キャプション:美術評論家 Critic
- 美術評論家(マイケル)
- (口からボロボロと食べカスをこぼしながら)んぐっ。ユトリロの筆使いは本当に素晴らしいね。(喉を詰まらる)でも、いつもって訳でもないな。(ゲップをして)特にルーベンスの後じゃね…。とにかく、これらの傑作は…、ウググッ…。(服にこぼした食べカスを払い落としながら)ありゃりゃ、フェルメールをこんなに、こぼしてしまった…。
- 評論家の妻(KATYA)
- (水の入ったコップを机の上に置きながら)あなた、ヴァトー Watteau *2をどうぞ。
- 美術評論家(マイケル)
- つまんねぇジョーク。
- 評論家の妻(KATYA)
- だって、脚本に書いてあったんだもん。
- 美術評論家(マイケル)
- はい、はい、分かったよ。だからって、バカ正直に読むこと無いじゃないか!
評論家の妻は泣き出してしまう。
- 美術評論家(マイケル)
- あぁ、すぐこれだ。ペチャクチャお喋り、ブツブツ文句!
- *1 『戦艦テメレール号』 Fighting Temeraire
- ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナーJoseph
Mallord William Turner (1775-1851)が、1838年に描いた作品。19世紀前半にその黄金期を迎えたイギリス風景画。ターナーはその代表的画家で、光と空気を幻想的に、しかし的確に表現し、後の印象派に大きな影響を与えたました。『戦艦テメレール号』は、かつてトラファルガーの海戦で活躍したテメレール号が、蒸気船に引かれてスクラップにまわされる時の様子を描いた作品で、発表当時から高く評価されていたそうです。→戻る
- *2 ヴァトー Watteau
- ジャン・アントワーヌ・ヴァトー Jean Antoine
Watteau (1684-1721)は、フランス・ロココの画家。恋する男女や田園で遊びに興ずる人々を優雅に描いた彼の作品は、「フェート・ギャラント 雅な宴」と呼ばれ、人気を博しました。ここでは水
Water と引っかけています。………はぁ。→戻る
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