■英国歯科医師協会
空飛ぶモンティ・パイソン 第4話(T−4)

アーサー・レミング Arthur Lemming :エリック・アイドル
本屋の男 (ステイプルトン Stapleton ジョン・クリーズ
ラファージ Lafarge :マイケル・ペイリン
ヴァン・デ・バーグ Van Der Berg :ディック・ボスバーグ Dick Vosburgh
ナース Nurse :キャロル・クリーブランド
ブライアン Brian :テリー・ジョーンズ
ビッグ・チーズ Big Cheese :グレアム・チャップマン
ナレーション Voice :エリック・アイドル
大佐 Colonel :グレアム・チャップマン

沢山の本が積み上げられた本屋のカウンターに、店員の男(ジョン)が立っている。
そこへレミング(エリック) がカウンターの所までやってくると、本屋の男は大げさに驚き、辺りを見回す

本屋の男(ジョン)
あっ。
レミング(エリック)
おはよう。ちょっと本が欲しいんだけど。
本屋の男(ジョン)
えっ、本なんてありませんよ(と、必死に本を隠そうとする)
レミング(エリック)
何ですって?
本屋の男(ジョン)
本はありません。ちょうど売り切れてしまったところでね。お引き取り下さい。
レミング(エリック)
じゃ、ここにあるのは何なの?
本屋の男(ジョン)
これ?ああ、コレですか。アハハハ。これの事を言ってるんですか、その…、本ね。
レミング(エリック)
そう。
本屋の男(ジョン)
これはですね…、これは全部、売約済みなんですよ。じゃ、さようなら。
レミング(エリック)
これ全部?
本屋の男(ジョン)
一つ残らずね。売れ残っている本は一冊もないんだ。
レミング(エリック)
誰に売ったの?
本屋の男(ジョン)
何が?
レミング(エリック)
誰が本を買ったの?
本屋の男(ジョン)
その…いろいろだよ。オッと、時間だ。昼休みだから、店を閉めなくちゃ。
レミング(エリック)
まだ10時半だよ。
本屋の男(ジョン)
ああ。でも、すごくお腹が空いてるもんでね。飢え死にしそうだから、今日はもう店じまいだ。もう、めいっぱい食べますよ。ほら!あの通りの向こう側に、良さそうな本屋があるじゃないですか。うちよりも品揃えが良いし、きっと値段もビックリするくらい安いよ。ちょっと、そこの道を渡るだけだし(と、ドアを開けて)じゃ、さようなら。
レミング(エリック)
でも、この店を薦められたんだけど。
本屋の男(ジョン)
(とても用心した様子で)ああ、そうか。ようし。えーっと、今年はスグリの出来が良いらしいね。それからマンゴーも(と、あからさまなウィンクをレミングに投げかける)
レミング(エリック)
何の話?
本屋の男(ジョン)
いや、その…。ちょっと天気の話をね。今年はスグリの出来がよいらしいね。それからマンゴーも。
レミング(エリック)
うちのは不作だよ。
本屋の男(ジョン)
(強く頷きながら)それで…。
レミング(エリック)
なに?
本屋の男(ジョン)
続けて…、「うちのは不作だけど」…。
レミング(エリック)
だから、なに?
本屋の男(ジョン)
「うちのは不作だけど、ビック・チーズは今晩、干潮の時に収穫する」とか何とか、言おうとしませんでした?
レミング(エリック)
全然。
本屋の男(ジョン)
あっ、そう。さようなら(と、彼を無理矢理、店の外に追い出そうとする)。待てよ。誰に教えられたの?
レミング(エリック)
お菓子屋の婆さん。
本屋の男(ジョン)
婆さんは、ここに切り傷があって、手がフックになってたりした?
レミング(エリック)
いや。
本屋の男(ジョン)
そんな婆さん、いるわけないよね。こりゃ勘違い。じゃ、さよなら。
レミング(エリック)
ちょっと待てよ。この店、なんか怪しいぞ。
本屋の男(ジョン)
何が?お宅、何も見ていないんでしょ。
レミング(エリック)
見てないけど、何かありそうだな。
本屋の男(ジョン)
ない、ない。この店には、そんなこと全然ないよ。じゃ、さよなら。
レミング(エリック)
きっと何か隠してるんだ。
本屋の男(ジョン)
どこも怪しくないでしょうが。信じて下さいよ。当店には少しも、も、も(レミングの背後から2本の腕が伸びてくる。本屋の男があわてて、それを追い払うと、その手は引っ込んでいく)おかしい所なんかないですよ。何か不審な点とか、あります?

店内のドアから、手にマシンガンを持った黒服の男が現れる。

黒服の男
怪しいことなんか無いさ。
本屋の男(ジョン)
ほらね。
レミング(エリック)
(黒服の男を指さして)誰?
本屋の男(ジョン)
伯母だよ。(レミングの注意を逸らすように)さっ、どの本が欲しいんですか?ほら、早く。
レミング(エリック)
『絵で見る入れ歯の歴史』が一冊、欲しいんだけど。
本屋の男(ジョン)
なんてこった。大した根性してやがる。
レミング(エリック)
何のこと?
本屋の男(ジョン)
お前は、英国歯科医師協会 British Dental Association の回し者だろ。
レミング(エリック)
違う、タバコ屋だよ。
本屋の男(ジョン)
ドアから離れろ。
レミング(エリック)
私は、ただ、ここを教えられただけで…。
本屋の男(ジョン)
動くな。ここから生きては返さないぜ。
レミング(エリック)
どうして?
本屋の男(ジョン)
貴様 my dental friend は知りすぎたんだよ。
レミング(エリック)
何の事やら、さっぱりだよ。
本屋の男(ジョン)
ごまかすんじゃない。お前、歯科医だろ。
レミング(エリック)
タバコ屋だってば。
本屋の男(ジョン)
タバコ屋が歯の本を買ってみた、とでも言うのか?
レミング(エリック)
そうとも。
本屋の男(ジョン)
ハッハッハッ。

そこへラファージ(マイケル)が店に入ってくる。彼は黒のタートルネックに、黒のジャケットとパンツというマフィアのような恰好で、手には小銃を握っている。

ラファージ(マイケル)
(本屋の男に向かって)銃を捨てろ、ステイプルトン。
本屋の男(ジョン)
ラファージ!(と、銃を捨てる)
レミング(エリック)
何かあるんだ。
本屋の男(ジョン)
何もないよ。
ラファージ(マイケル)
オーケー、ステイプルトン。マホーニーが隠した詰め物 Filling は、どこだ?
本屋の男(ジョン)
何のことだ?
ラファージ(マイケル)
しらばっくれるな。(歯の検診で使うミラーのように、銃を動かしながら)上の右、2、4。下がって右、3、2。下の左、1。言え!ナイジェルがどうなったか、覚えてるんだろ?
レミング(エリック)
(本屋の男に向かって)どうなったの?
本屋の男(ジョン)
歯科矯正医のジャックが、ダイナマイトでうがいをさせたんだ。
レミング(エリック)
やっぱり怪しい。
本屋の男(ジョン)
怪しくないってば。
ラファージ(マイケル)
さぁ、吐け、ステイプルトン。詰め物はどこだ?
本屋の男(ジョン)
ウィムポール通り22番。
ラファージ(マイケル)
ふざけるな!(銃で、本屋の男の目を突く)
本屋の男(ジョン)
ウグッ!ウィムポール通り22番Aだ。
ラファージ(マイケル)
ようし、いい子だ。
本屋の男(ジョン)
でも予約がいるぞ。
ラファージ(マイケル)
オーケー、ブライアン!(と、店の外に向かって叫ぶ)。予約をとっておけ。麻酔はいらん。

そこへ、マシンガンを持ったヴァン・ダ・バーグ(ディック)が、ナース(キャロル)と一緒に入ってくる。バーグは歯科医用の白衣を着ているが、黒い帽子をかぶり、スカーフやネックレスをつけている。白衣のナースもスカートはミニで、手には手術用トレイを持っている。

ヴァン・ダ・バーグ(ディック)
まて、ラファージ!
ラファージ(マイケル)
ヴァン・ダ・バーグ!
ヴァン・ダ・バーグ(ディック)
銃を捨てろ。
レミング(エリック)
やっぱり何か隠してる。
本屋の男(ジョン)
何でもないっ。
ヴァン・ダ・バーグ(ディック)
(ナースに向かって)銃を拾え。

ナースは駆け寄って銃を拾い上げ、手術用トレイの上に置き、その上に白い布を掛ける。

レミング(エリック)
(本屋の男に向かって)あれは何者?
本屋の男(ジョン)
ヴァン・ダ・バーグ。仲間だ。
ヴァン・ダ・バーグ(ディック)
ようし、ラファージ。壁の前に立て。それから、お前もだ、ステイプルトン。
本屋の男(ジョン)
俺も?
ヴァン・ダ・バーグ(ディック)
そうだ。
本屋の男(ジョン)
汚いぞ、裏切り野郎め。
レミング(エリック)
どうしちゃったの?
本屋の男(ジョン)
寝返りやがった。
レミング(エリック)
ついてない。
ヴァン・ダ・バーグ(ディック)
(ラファージに向かって)詰め物はどこだ?隠し場所を言え。
レミング(エリック)
(楽しそうに)ドキドキしちゃうね。

そこへバズーカ砲を持ったブライアン(テリーJ)が入ってくる。彼は緑色の手術服、帽子、マスク、白いゴム長靴を身につけており、肩には1メートル以上はありそうなバズーカ砲を乗せている。

ブライアン(テリーJ)
ちょっと待ちな。
全員
ブライアン!
レミング(エリック)
あれは何?
レミング以外の全員
バズーカ。
ブライアン(テリーJ)
ようし。ヴァン・ダ・バーグ、壁の前に立て。お前もだ、ナース。少しでも動いて見ろ。診療所が6フィートの地下に潜るぞ。この対戦車砲は、ちゃんと装填してあるんだからな。さぁ、5つ数えるうちに答えろ。ジェーンに何があったんだ?
全員
何?
ブライアン(テリーJ)
あっ、ゴメン。混乱しちゃった。今日は一日、大変だったもんでね。いや、ホント。…5つ数えるうちに答えろ。…何だっけ、忘れちゃったよ。
本屋の男(ジョン)
5つ数えるのは、まだなんじゃない?
ヴァン・ダ・バーグ(ディック)
質問も聞いてないし。
レミング(エリック)
フォーグラー のこと?
ブライアン(テリーJ)
いや、違うなぁ。5つ数えるうちに答えろ…、えーっと。
ヴァン・ダ・バーグ(ディック)
ナイジェルのこと?
ブライアン(テリーJ)
いや。
ラファージ(マイケル)
ブロンスキー?
レミング(エリック)
詰め物!
ブライアン(テリーJ)
あっ、それそれ。詰め物。俺ってバカだなぁ。…ようし、5秒やる。詰め物はどこだ?5、4、3、2、1、ゼロ!(しかし何も起こらない)。ゼロ!オッと、引き金を引き忘れてた。ゴメンね。今日はダメだな。それでは、と。5、4、3、2、1…。

突然、壁が開き、歯科診療台に座ったビック・チーズ(グレアム)が登場する。ビック・チーズも歯科医師用の服を着ているが、その色は黒で金の縁取りがしてある。首からは金のネックレスをぶら下げ、手には黒い手袋、指輪、飾り爪を付けており、膝の上にはウサギを乗せている。

ビッグ・チーズ(グレアム)
ブライアン、バズーカをお捨てなさい。
全員
ビッグ・チーズ!!
ビッグ・チーズ(グレアム)
皆さん、私のささやかなパーティーへようこそ。フロプシーも、すごく喜んでるわ。(ウサギに向かって)そうでしょ、フロプシー?どうなの、フロプシー?(ビック・チーズはフロプシーを銃で撃ち、放り投げてしまう)。ふん、生意気な子。可哀想なフロプシーは死んでしまったわ。死んだら、私を「ママ」って呼べなくなっちゃうのに。でも、もうすぐ、あなた達も死ぬのよ。死ぬの、死ぬの、死ぬの。(他の人々は彼に向かって、「シーッ、シーッ」と言い始める)。私は悪魔。だから、じっくり殺すわよ。…ドリルを使ってね。
レミング(エリック)
もう、1時だよ。
ビッグ・チーズ(グレアム)
そう。じゃ、昼休みにしましょ。2時になったら、ここに戻ってくるように。

全員はリラックスした様子で本屋から出ていく。しかし、レミングだけはコッソリと電話をかけに行く。

レミング(エリック)
(電話をかけて)もしもし。英国歯科医師協会を頼むよ。大至急。
画面:歯科病院の診察室。

歯科医師の姿をしたレミングが、診療台に横たわった患者を治療している。

レミング(エリック)
(カメラに向かって)あの店には何かある、と前から睨んでいたのさ。ビッグ・チーズは2つの大きなミスを犯した。第一に、彼は私を知らない。私の名はレミング、アーサー・レミング。英国歯科医師協会の特別調査員だ。第二に…、(患者に向かって)吐き出して、…私は昼休みの間に南東区の歯科医たちを召集し、カップボードの中で待ち伏せさせた。笑っちゃうね。やぶ医者は、とんだヘマをするものさ。じゃ、このへんで。みんな、歯を磨くんだよ。

画面:アーサー・レミングが歯科用ミラーを片手に持って、ポーズを取っている写真。
それにあわせて、歌が流れ出す。

レミング、レミング、BDAの男
レミング、レミング、BDAの男
      
Lemming, Lemming, Lemming of the BDA
Lemming, Lemming, Lemming of the BDA
Lemming, Lemming, Lemming of the BD
Lemming of the BD、 BD、 BDA.
ナレーション(エリック)
(レミングの写真の下方に、同様のキャプションが出る)。英国歯科医師協会こそ、男の生きがい。IT'S MAN'S LIFE IN THE BRITISH DENTAL ASSOCIATION.
大佐(グレアム)
(レミングの写真を倒して)やめろ!スローガンについては警告したはずだ。もう、終了だ。番組をとめろ。やめるんだ!

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