■レストラン・スケッチ   
空飛ぶモンティ・パイソン 第3話(T−3)

司会者 Compere マイケル・ペイリン
女性 Lady :キャロル・クリーヴランド
男性 Manグレアム・チャップマン
ウェイター Waiter :テリー・ジョーンズ
ヘッド・ウェイター Head Waiterマイケル・ペイリン
マネージャー Managerエリック・アイドル
コック Cookジョン・クリーズ

画面:砂浜。ロバを抱えた二人の男が走り去っていく。赤いジャケットを着た司会者(マイケル)が、カメラに向かって喋り出す。

司会者(マイケル)
またまたコンニチハ。次にお届けするは、ロンドン出身の若者二人によるミニ・コントです。3年がかりのこのコント、彼らはこう呼んでいます。それではご紹介しましょう−レストラン・スケッチ。

画面:レストラン。テーブルにカップルが座っている。

女性(キャロル)
素敵なお店ね。
男性(グレアム)
ああ、いいレストランだよ。なんてったって、三ツ星だからね。
女性(キャロル)
まあ、そうなの。
男性(グレアム)
うん。
ウェイター(テリーJ)
お客様、ようこそ、いらっしゃいました!こんばんは、マダム!また、こうしてお客様にお越し頂けるとは、喜ばしい限りでございます。
男性(グレアム)
いやいや、こちらこそ。ありがとう。さ、メニューをごらん。君の好きなものを選ぶといい。クルトンに載せたビーフなんか、最高だよ。
ウェイター(テリーJ)
差し出がましいことを申し上げるようでございますが、キジのアラリーヌなどはいかがでしょう。シェフ独自の味付けによるソースが評判でして。
男性(グレアム)
よさそうだね。まずはメニューを見てからにするよ。もうちょっと待って貰えるかな。あ、それから、フォークが少し汚れているんだ。他のを持ってきて貰えるとありがたいんだが…。
ウェイター(テリーJ)
はい?なんと仰いました?
男性(グレアム)
いや、大したことじゃないんだが、フォークが少しだけ汚れているものだから。他のフォークを頂けませんかね。申し訳ないが。
ウェイター(テリーJ)
こ、これは、なんとお詫びを申し上げてよいやら…。
男性(グレアム)
そんな、謝るようなことじゃないよ。全然、気にしてないから。
ウェイター(テリーJ)
いえ、どうかお詫びさせてください。すぐにヘッド・ウェイターを連れて参りますので。
男性(グレアム)
いやいや、だから、そんなことして貰わなくてもいいって。
ウェイター(テリーJ)
いけません、ヘッド・ウェイターも直接、お詫び申し上げたいはずです。すぐに連れて参りますので。

ウェイターがヘッド・ウェイターを呼びに行く。

女性(キャロル)
まあ、サービスがいいのね。
男性(グレアム)
ああ、至れり尽くせりさ。
ヘッド・ウェイター(マイケル)
ムッシュー、マダム、ご無礼をお許しください。(フォークを見て)こ、これは汚い…。ガストン、このフォークを洗った者を見つけだせ。即解雇だ。
男性(グレアム)
や、やめてください。
ヘッド・ウェイター(マイケル)
いや、これでは手ぬるいな。抜かりがあってはいかん。洗い場の担当は全員、クビにしろ。
男性(グレアム)
そんな大ごとにしないでくださいってば。
ヘッド・ウェイター(マイケル)
どうぞ、ご安心ください。ご面倒はお掛けいたしません。お客様がフォークの汚れをご指摘なさったのは、全く当然のことです。ガストン、マネージャーに報告したまえ。すぐにだっ!

ウェイター(テリーJ)が走り去る。

男性(グレアム)
事を荒立てたくないんですよ。
ヘッド・ウェイター(マイケル)
ご心配なさらず。お客様には何ものにも煩わされることなく、心ゆくまで食事を楽しんで頂きたい、それこそが私どもの願いでございますから。
男性(グレアム)
だから、全然、気にしてません。フォークがちょっと汚れていただけのことです。
ヘッド・ウェイター(マイケル)
いえ、本当に申し訳ございません、全く身を切られるような思いでございます。しかし…、どんなにお詫びの言葉を申し上げようとも、この事実を変えることは叶いません。こともあろうか、このレストランでお客様に、汚らしく、不潔で、悪臭を放つフォークをお出しするとは。
男性(グレアム)
臭くはないでしょ。
ヘッド・ウェイター(マイケル)
いえ、臭います。むかつくような、反吐が出るほどの臭さです。私には…、私には堪えられません。汚穢のこびりついた、胸の悪くなるフォークっ。みすぼらしく薄汚れた、虫酸が走らんばかりのフォークっ。うぐっ、ぅぅぐっ(と苦しみながら走り去る)

そこへ、マネージャー(エリック)がやってくる。

マネージャー(エリック)
今夜は、ようこそおいでくださいました。私が当店のマネージャーです。話は聞きました。…ここにお掛けしても?
男性(グレアム)
ええ、どうぞ。
マネージャー(エリック)
このフォークにつきましては、心より深くお詫び申し上げます。
男性(グレアム)
もう結構ですから。汚れてるといっても、ちょっとだけなんですよ。ほら、見えないくらいだ。
マネージャー(エリック)
ああ、お客様は何と寛容な心の持ち主なのでしょう。しかし、私には見えます。うずたかく盛られた、おびただしい量の膿がっ。
男性(グレアム)
い、いや。それほど、ひどくはないって。
マネージャー(エリック)
どうして許しを乞うことが出来ましょうか。弁解の余地もございません。どうにかレストランを切り盛りしようと思っては参りましたが、いかんせん、体の調子が悪くて…。(泣きながら、感情的になって)厨房も上手くいってなかったんです。…コックの息子はまた刑務所に戻ってしまいました。可哀相に、洗い場のダーリンプル婆さんの指は殆ど動かなくなってしまったし、ギルバートも戦争の傷に苦しんでいます。でも…、みんな、いいやつなんです。心の温かい人間ばかりだ。私たち全員で、ようやく、この暗く苦しい時期を乗り越えようとしていたのに…。やっと、長いトンネルを抜け、光が見えてきたと思ったのに…、その矢先に…。
男性(グレアム)
お、お水でもいかがです?
マネージャー(エリック)
(泣きながら)もう、一貫の終わりだーっ。

そこへ、巨大な肉切包丁を手にしたコックがやってくる。

コック(ジョン)
(叫びながら)このぉ、鬼めっ。テメエなんか、人情のかけらもねえ、ひでえ畜生野郎だ。こいつに、なんてことしやがるんだ。こいつはなぁ、ボロボロになりながら、このレストランをどうにかやってきたんだぞぉ。テメエらが、つまらねぇ揚げ足とりをしやがったせいで、なぶりものにされちまったじゃねえか。こいつはな、心の温っけえ、立派な人間なんだ。テメエらなんか、足下にも及ばねえんだぞっ。うっ、ぅぅっ。頭がどうかしそうだっ。うぐっ(と、包丁をテーブルに叩き落とす)
ヘッドウェイター(マイケル)
(コックにむかって)落ち着け、モンゴー。落ち着くんだ。(頭を押さえ、もがきながら)うぐっ、戦争の古傷がっ。き、傷が…。
マネージャー(エリック)
もう駄目だ。おしまいなんだーっ。(フォークを自分の体に突き刺して)ぐあっ。
コック(ジョン)
テメエらが、マネージャーを追いつめたんだ。死んじまったじゃねえかっ。テメエが殺したんだよぉ。
ヘッドウェイター(マイケル)
モンゴー、お客を殺しちゃいかん。ううっ、古傷が痛むっ。

ウェイター(テリーJ)が飛び込んできて、コック(ジョン)と共に、テーブルの上に倒れ込む。

キャプション:それでは、ここでオチのセリフを。

男性(グレアム)
(女性にむかって)汚れたナイフのことを言わないで良かったよ。

画面の外から、ブーイングの声が聞こえてくる。

画面:最初の砂浜。赤いジャケットの司会者(マイケル)が立っている。

司会者(マイケル)
「レストラン・スケッチ」でした。なかなか良くできたコントでしたね。ちょっと残酷な場面もあったけど、だいたいは楽しめたんじゃないかな。でも…、オチはどうかな?つまり、その…、分かって貰えると思うけど…。うーん…。

先ほどのスケッチに登場した男性(グレアム)が、鎧の騎士からチキンを借りて、それで男性の頭を殴る。


このスクリプトを翻訳するにあたり、akko さんにアドヴァイスを頂戴しました。
ミスを減らせたことはもちろん、なにより、とても私の勉強になりました。
心より、お礼申し上げます。ありがとうございました。(2001年7月8日)


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